支えてくれる人がいない
障がいを持つ児童の保護者の多くがそんな孤独感を抱きます。世間の無理解だけでなく公的サポートの拡充がなかなか進んでいないことも一因です。
そんな中、北海道苫小牧市にある一般社団法人「りあん」さんでは未就学児から高校生くらいまでの、障がいを持つ子供たちの児童発達支援や放課後等のデイサービス事業を行っていらっしゃいます。
今回は「りあん」さんに通うお子さんにDFreeを使用していただき、排泄ケアでの困りごとや実際に使ってみた感想などのお話を伺いました。
目標は尿意の認識
りあんに週1で通うMちゃんは、動物や絵本が好きで、YouTubeも見る小学4年生の女の子。低酸素脳症のため知的障害があり、移動は基本的に車椅子です。今は介助者と手を繋いでの歩行練習をしている最中です。自分の意思を口で伝えることは難しいのですが相手の言うことは理解していて、指さしで意思を伝えます。しかし、今までは「トイレに行きたい」と尿意を伝えることはなく、排泄は全てオムツの中にしていました。なので一日に大体学校で5回、家で3回ほどオムツ交換をしていました。

今回はお母様がDFreeのモニターに協力したいと手を挙げて下さり、MちゃんにDFreeを着用してもらうことになりました。
今回DFreeを利用している間の目標は、「適切なタイミングでトイレに行くことで尿意を認識し、トイレでの排尿ができるようになること」です。
DFreeの使い心地
Mちゃんにはまず「りあん」に来る月曜日の15時からと、週に2回お母様と一緒に過ごせるお休みの日にDFreeを使用してもらいました。Mちゃんは点滴などのテープを剥がしてしまうことがあるようで、初めてDFreeを装着した際もセンサーを固定する医療用テープが気になってしまい取り外してしまいました。しかし一度着けてしまえばその後は気になるそぶりを見せることもく、自分で外してしまった、ということはほとんどありませんでした。

今までオムツで排尿していたところをトイレでできるようになるために、まずはアプリで尿のたまり具合をチェックしながらトイレに連れて行くようにしました。ただ、初めての試みということもあり使い始め当初はなかなかタイミングが合わず、トイレで尿が出ないこともあれば、既にオムツに出てしまっていることもありました。試行錯誤の結果、尿のたまり具合をアプリで確認する際にアプリ上のたまり具合が「レベル4」になったら通知されるように設定し、その通知に合わせてトイレに連れて行くようにしてもらいました。
トイレのサインを出すように
Mちゃんには3か月の間、週約3回DFreeを使用してもらいました。その結果、今まではいつもオムツで排尿していたところ、1日のうち2回から3回はトイレで排尿できるようになったのです。
実際に使用いただいたMちゃんのお母様からは
「アプリを見ているとすぐにレベル4まで溜まるので最初はトイレに行く回数が増えて大変だなと思いましたが、慣れればトイレのタイミングが分かってきました。オムツにたっぷり出るということはなくなり、トイレで排尿できることが増えました。最初はトイレに連れて行っても出ないということはありましたが、最近ではトイレに行ったらきちんと出せるようになりました」と感想をいただきました。

さらに、排尿だけでなくトイレでの排便にも成功することができました。自宅でトイレでの排尿が成功するとたくさん褒めてあげているそうです。
「トイレで出るようになってきたのは、出そうという気持ちが増えたからかもしれません」とお母様。
今までは尿意を周囲に伝えることのなかったMちゃんですが、DFreeをつけていないときでも手話を使った“トイレのサイン”(指を2本立てて肩をトントン)を時より出すように。尿意や排尿をしている意識が芽生えたようです。
「トイレに座る回数を増やして、こっちの方が気持ちいという学習を進めていくといいですね」とMちゃんの通う病院の先生からもコメントをいただくことができました。
その後もMちゃんの努力は続き、最近はオムツではなく布のパンツとパッドの使用に挑戦しているそうです。学校で漏らしてしまうこともほぼなく、トイレでの排泄に成功しているという嬉しい報告をいただきました。
編集後記
今回のMちゃんの事例は失禁や頻尿という排尿の問題ではなく、そもそも尿意の認識がなく、オムツに頼らざるを得ないという難しいケースでしたが、DFreeを使ってトイレトレーニングができることが分かりました。
これまでMちゃんのようなケースでは「トイレでするのは難しい」という考えがありましたが、「トイレへ促す働きかけもできる」という気づきにつながりました。DFreeの活用によって、当事者だけではなくサポートする家族や周囲の意識の変化につなげることができたようです。
一度漏らしてしまうと、体を拭いてあげ、着替えをさせ、漏らした場所を掃除する、など多くのタスクが発生し、ケアする側に大きな負担がかかります。もちろん漏らした本人も決して気持ちの良いものではないでしょう。
「失敗した時のことを考えると、オムツを完全に外してしまうことには勇気が必要です。それでも次は布パンツとパッドでオムツが外れるかチャレンジしてみたいです」というMちゃんのお母様の言葉が印象的でした。
DFreeはDiaper(オムツ)からFree(自由)になる世界を目指して名づけられました。オムツだけに頼らず、「トイレに行く」というチャレンジを私たちはこれからもサポートしていきます。
0 comments on “インタビューFile.4 目指すはトイレですること(知的障がいのある児童のケース)”