2023年7月にDFreeを導入いただいた介護老人福祉施設 サルビアさま。「自分らしく生きること」をモットーに、利用者さまの個性を大切にしたケアを実践されています。DFreeを活用した排泄ケアもその一つです。導入後1年が経過した現在までのDFree活用背景や効果、今後の展望についてお話を伺いました。
インタビュー参加者
施設長 清澤秀彦さま
チームリーダー 中谷瞳さま
活用背景について
利用者さまの希望を尊重した排泄ケアを目指して
ー DFreeをご活用いただいた背景として、サルビアさまでの業務改善ニーズ、課題はどのようなものがあったのでしょうか?
清澤さま)
以前より可能な限りトイレでの排泄を目指して取り組んでいました。パッドやおむつが必要な方に対しても定時でのケアではなく、お一人おひとりに合わせたケアを行ってきました。排泄チェック表の使用や、必要に応じてパッドの重さの測定を行うとともに、ご本人様のご様子や睡眠状況、ご希望を尊重して排泄ケアの内容を検討しています。
とはいえ、実際の蓄尿量が目に見えるわけではないため、ケアのタイミングが合っているのか、パッドの容量が適切なのか、といった部分が掴み切れませんでした。また、頻繁にトイレをご希望される入居者さまもいらっしゃいますので、尿意があって頻繁な訴えにつながっているのか、それとも、また違った要因があるのかわからないという悩みがありました。
ー DFreeご導入前から、尿量測定などの個別ケアに取り組んでいらっしゃったのですね。
中谷さま)
新規入所の方には、入居されて数週間は必ずパッドの重さを量ったりという取り組みをしていました。

ー そうした取り組みの中で、膀胱の状態が把握しきれずに難渋されていた部分があったということですね。では、DFreeをどのような経緯で知っていただいたのでしょうか?
清澤さま)
2019年ごろからスタートアップの表彰やICTのメディアでDFreeが出ていたので、知っておりました。
ー ありがとうございます!DFreeを知ったときはどのように思われましたか?
清澤さま)
排泄ケアの悩みを解決できる優れた機械だなと思っていました。その反面、今までになかった新しい機器ですし、排泄ケアは尊厳や衛生面に特に配慮が必要な分野ですから、慎重に取り扱わないといけないと考えておりました。
また、利用者さまのお体に身に着けるという点でご本人さまの不快感はどうなのか、実際の有効性はどの程度なのか、という点については、正直言って疑心暗鬼でした。
トライアルについて
DFreeの有効性を確かめるべく無料トライアルへ
ー 疑心暗鬼だった部分に関しては、実際にトライアルをしていただいて解消されましたか?
清澤さま)
そうですね。チームリーダーや現場の責任者とトライアル説明会に臨んだのですが、排泄支援の長年の悩みを解決する糸口になる大変優れた価値のある機器だなということを感じました。
あとは、利用者さまの尊厳や衛生面、装着感などに対する配慮や検討を重ねて開発されていることがわかりましたので、安心できました。
それから、費用面ですね。イメージ的には入居者さま全員分の台数を買わなきゃいけないのかなと思っていたのですが、一人の方にずっと使うわけではなく、その方の排尿のタイミングを掴むために一定期間使うものだと伺いました。一人一台でなくてもいいことがわかったので、費用的にも本当に有効だなと思ってトライアルをお願いしました。
ー トライアルではどのような課題のある利用者さまにDFreeを使ってみようとお考えでしたか?
中谷さま)
トライアルではトイレ誘導の方とパッド交換の方、合わせて6名ほどお試しをしました。
新規入居の方などには、最初はパッド交換を事前に決めた時間に行うことがあるのですが、やはり空振りがあったりすると、入居者の方にとっても体の負担になりますし、業務にも手がかかってしまいます。他にも、トイレに行っているのにトイレで排尿がなくパッドに出てしまう方、その方に合ったトイレ誘導のタイミングを知りたい方がいらっしゃいました。
終末期にさしかかってきて尿が出ない方もいらっしゃったので、膀胱内に尿がたまっているのかを確認するために使わせていただいたりもしました。
DFreeでデータを取得し、根拠を持てることが、ケアの自信につながった
ー トライアルでは、どのような効果が得られましたか?
中谷さま)
トイレ誘導のタイミングが今まで通りで良かったことがわかった事例と、定時ケアの時間とはちょっと違ったタイミングで尿がたまっていることがわかった事例がありました。
その方の尿のたまるタイミングをしっかり知ることができたので、例えば昼食後よりも昼食前に誘導した方がいいね、など、具体的なケアの取り組みが決められる点がとても良かったと思います。
ー ありがとうございます。もともとトイレ誘導時に拒否があって、誘導のタイミングを昼食前に変更したら少しご機嫌がよくなったという利用者さまもいらっしゃいましたよね!その他にはいかがでしょうか?
中谷さま)
夜間の排尿が少ない方のパッド交換の回数を減らせました。パッドにごく少量排尿しているけれども、交換タイミングにズレがありそうな方のパッド交換のタイミングを調整することで、パッドの交換回数と大きさを変えることができました。
例えば、夜間2回交換から1回交換に減らせたりとか、夜間は尿をためることができていて朝方にまとまって排尿があることがわかれば、起床時に合わせて交換するなど、その方に合ったタイミングでケアを行えるようになりました。自然とパッド交換回数の削減とサイズダウンができたと感じています。
ー ありがとうございます。パッドの適正化や職員さまの負担軽減にもつながったということですね。トライアルにご参加いただいた職員さま、および利用者さまからはどのような感想が聞かれましたか?
中谷さま)
職員からは、自信につながるという声があがりました。機械の精度としてどうしても100%ではないというのはありますが、「この時間に排泄ケアに入れば大丈夫」という根拠が持てることがケアの自信につながったという意見が多く聞かれました。
ー DFree社員によるサポート品質についてはどのようにお感じですか?
中谷さま)
LINE WORKSで困ったときに連絡でき、すぐに返答をいただけるので、相談できる体制があることで不安解消につながっておりとても良かったと感じています。

ー ありがとうございます。DFreeの機能の中で、この機能は使いやすい、この機能は効果的だな、とお感じいただいているものは何かありますか?
中谷さま)
排尿前の「そろそろ通知」は良いなと思っています。通知を使用することで、そろそろトイレに行く時間なんだなという心の準備と、それに合わせた支援ができます。
最近では排尿の傾向を分析する機能もありますので、分析結果をケアに反映することができています。
ー DFreeで得られたデータをもとに、実際にケアを変更できた事例はありますか?
中谷さま)
DFreeを活用したケアを実践した方がその後お亡くなりになることが重なってしまって、そんなに長い期間取り組めたわけではないのですが、パッドの交換回数や交換時間を変えてみるとか、トイレ誘導の時間を変えるということは実際に取り組むことができています。
科学的介護を推進するため、DFree導入を決意
ー トライアルを経て導入を検討するタイミングでは、どなたがどのようにご検討いただいたのでしょうか?
清澤さま)
やはり職員が機器を使えることが一番重要なので、現場を中心にトライアルをしてもらいました。私はDFreeを導入する前から有効な機器だと思っておりましたが、利用者さまによってDFreeを使用できる方とそうでない方がいること、それから、運用する上での職員の業務の手間が増えないかなど、さまざまな検討材料はありました。
しかし、総合的に見ても科学的介護を進めていくためには必要な機器だと感じましたし、現場からもいい評価だったので、すぐに導入の手配を進めました。
ー その他に、導入に向けて議論にあがった点はありましたか?
中谷さま)
現場からは「今後も使っていきたい」という意見が多かったので、そのまま購入に繋がったと思います。「台数が1台では足りないんじゃないか?」という意見は出ましたね。トライアルを経て、この利用者さまにDFreeを使ってみたいなというイメージが膨らみました。
ー 台数を増やしたいというお声もあがっていたのですね!
中谷さま)
はい。実際に、DFreeを使いたいのに別のフロアで使用中なので使えない…ということがあります。タイミングを逃すと利用者さまの状態も変わってしまうので、もうちょっと台数があるといいなという意見が出ています。
導入効果について
排泄ケアのタイミング検討やパッドの見直しにDFreeを活用
ー 現在の DFree 活用方法について教えてください。DFreeを使用する利用者さまはどのように決めていらっしゃるのですか?
中谷さま)
ユニットごと、フロアごとにトイレ誘導のタイミングに困っていたりとか、何かしら困りごとがある方、タイミングがずれてしまう方が対象になっています。トイレ誘導の方もパッド交換の方も、どちらも対象になります。
排泄委員会の職員とユニットリーダーで相談をした上で、ご家族にも必ず同意を取るようにしており、同意が取れた方からDFreeを使用しています。
ー 利用者さまおひとりあたり、どれくらいの期間DFreeを使用されていますか?
中谷さま)
日中1週間、夜間1週間の合計2週間使用しています。2週間使用すると、よりしっかりとしたデータを取ることができます。
さらに、その方の膀胱の状態をモニタリングしたい時間に合わせて使い分けています。例えば、日中は特に問題ないけれど夜間の排尿タイミングを知りたいという方には夜だけ重点的に使うようにしています。

職員同士での情報共有と教えあいが、施設全体でのDFree活用を後押し
ー DFreeをご導入いただいたことで、現時点でどのような効果や成果を実感していますか?
中谷さま)
トイレ誘導の方は「そろそろ通知」、パッド交換の方は「でたかも通知」機能を主に活用しています。DFree使用期間中は同時に尿測も実施して、利用者さまの尿量に合わせたパッドの選定も行っています。
これにより、利用者さまに合ったパッドを使えるようになっています。また、トイレ誘導もより適切なタイミングで行けるようになっていると思います。トイレでの排尿を100%毎回成功させることは難しいかもしれないですが、今までよりも根拠を持って支援できるようになりました。
ー 今まで尿測を実施されていたところにDFreeが加わったことで、より的確にパッドの選定やケア時間の調整がしやすくなったということですね。
中谷さま)
はい、トイレ誘導時の空振りが減らせたことで職員の負担も減りましたし、このタイミングであればしっかり尿が出るんだなということがわかりました。
ー そうですよね。せっかくトイレにご案内しても出なくて利用者さまも職員さまもがっかり、ということはなるべく減らしていきたいですよね。

ー サルビアさまでは毎月コンスタントにDFreeをご利用いただいており、大変嬉しく思っております。導入から1年間使用していただく中で、機器の使い方に関するレクチャーはどのように進められていたのでしょうか?
中谷さま)
私たちの施設は5フロア10ユニットあり、いきなり全部のフロアで一気にDFreeの活用を進めるのは無理だなと感じました。そのため、1つのフロアでトライアルをして、2つ目のフロアでトライアルをして…と徐々に周知を行いました。トライアル後は排泄委員会内で結果を共有しました。
今は、職員から職員へ使い方をしっかり広めてくれる体制になっています。私の知らないところでしっかりと引継ぎをしてくれていて、疑問点もまずは職員同士で解決するという体制になっています。今は、最初にトライアルをしたフロアの職員が排泄委員長になっているので、しっかりDFreeのことを広めてくれています。
また、膀胱の位置をいきなり把握するのが難しかったので、初めのうちは医師と看護師と一緒に位置を確認してから装着するようにして慣れていきました。
ー ありがとうございます。職員さま同士でDFreeの輪を広めていただけて、とても嬉しいです。職員さま間での引継ぎの際に工夫されていることはありますか?
中谷さま)
次にDFreeを使用するフロアを決めておき準備期間を確保する、というルールをしっかりと決めています。入居者さまの選定とご家族への説明・同意を、あらかじめ前の月に準備してもらっています。そして月末にDFree一式を次のフロアに持って行き、使い方のレクチャーも完了した状態で使用を開始するようにしています。
今後の展望について
DFreeをアセスメントの必須アイテムに
ー サルビアさまでのDFree活用の秘訣を教えていただきありがとうございます。今後のDFree利用における展望があれば教えていただけますか?
中谷さま)
今後も積極的に使っていきたいです。例えば新規入所の方にDFreeを使用することで、根拠を持って、その方の状態に合わせた24シート1を作成したいと考えています。排泄に関して、その方に合うシートが作成できれば、より快適にお過ごしいただけるのではないかと思っていますので、DFreeを24シート作成時の必須アイテムにしたいですね。
清澤さま)
新規入所の方にも使用するにはDFree1台では台数が足りないんですよね。近いうちに2台目とかは検討したいと思います。
ー ありがとうございます。サルビアさまには「日常生活の継続」「個性を大切に」という理念があるように、利用者さまにあわせたケアをDFreeで進めていこうとされているのですね。
清澤さま)
はい。加えて、DFreeなどの技術を取り入れながらケアをしていることは、施設のPRにも大いにつながると思います。最近は入居者さまとご家族が施設を選ぶ傾向になりつつあります。選定の基準として、「ここの施設はどのようなことに取り組んでいるのか」ということに関心をお持ちになる方が増えてきています。
介護ロボットは怖くない
ー 最後に、DFreeの導入を検討されている施設さまへのメッセージがあれば教えていただけますか?
清澤さま)
施設長としての立場から言うと、DFreeでケアの質向上が強化できることと、先ほどもお話ししたように、波及効果として「こういう機器を使っているよ」ということをPRしていくと、採用活動などにおいて他の施設さんからの質問が来たりするんですね。
排尿ケアに関する効果以外にもこのようなメリットがあることを考えると費用も安いので、とても有効的な機器だなという風に思っております。
中谷さま)
現場としての導入前の一番の不安は、新しい機器を使用する上での理想と現実ってどうなんだろう、ということでした。例えば、業務に追われて十分に活用できないかもしれないとか、機械を利用者さまの体に直接装着することですね。あとは、やはり認知症の方がたくさんいらっしゃるので、機器を外して捨てられてしまったらどうしようという意見が多かったです。
ですが、ほとんどの不安はトライアルをすることで解消できるので、実際に使ってみるのはとても大切だと感じました。「知りたいことを知れた!」という成功体験や、自分たちのケアに根拠と自信を持てることにつながるので、「新しい機械」「介護ロボット」という言葉を怖がらず、どんどんチャレンジしてみてほしいと思います。
インタビュー概要
社会福祉法人 梓の郷 介護老人福祉施設 サルビア
施設長 清澤秀彦さま
チームリーダー 中谷瞳さま
- 施設:介護老人福祉施設 サルビア(全室個室/ユニット型100床)
- 住所:〒390-1701 長野県松本市梓川倭 3234番地15
- TEL:0263-78-7288
- 施設ホームページ:https://azusanosato.or.jp/facilities/salvia/

- 入居者さまの1日の過ごし方を記録することで、生活リズムに合わせたケア方針を検討できるようにするためのアセスメントツール ↩︎

0 comments on “科学的介護の推進を目指してDFree導入!【介護老人福祉施設 サルビアさまの事例】”